したたか)” の例文
一月十七日なる感はいとはげしく動きて、宮は降頻ふりしきる雪に或言あることばを聴くが如くたたずめり。折から唯継は還来かへりきたりぬ。静にけたるドアの響はしたたかに物思へる宮の耳にはらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
奉公大事ゆゑにうらみを結びて、憂き目にひし貫一は、夫のわざはひを転じて身のあだとせし可憫あはれさを、日頃の手柄に増して浸々しみじみ難有ありがたく、かれをおもひ、これを思ひて、したたかに心弱くのみ成行くほどに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
満枝は彼のおもてしたたか怨視うらみみまたたきず、その時人声してドアしづかきぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)