索然さくぜん)” の例文
一同、酔も索然さくぜんと、興ざめ顔に白けたのはいうまでもない。遊び疲れも頃あい。それをしおに、その夜の無礼講も下火とみえた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鰹節競争かつぶしきょうそう鮭探しゃけさがしなどは結構だがこれは肝心かんじんの対象物があっての上の事で、この刺激を取り去ると索然さくぜんとして没趣味なものになってしまう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このおとろえた女王の巾着きんちゃく切めいた商売は、ふたたびいまいましく興味索然さくぜんたらしめることに、力をつくしたのであった。
その中にもこの歌は字余りにしたるがため面白き者に有之候。もし「思ふ」といふをつめて「もふ」など吟じ候はんには興味索然さくぜんと致し候。ここは必ず八字に読むべきにて候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あり余る財産とオノレーブルを抱きながら死灰のごとき索然さくぜんたる孤独生活を送っていた。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
国家の元気索然さくぜんとして、遂にた奮わず、この膝一たび屈して遂にた伸びず、故に一時逆流に立ち、天下の人心を鼓舞作興し、しかる後おもむろに開国の国是こくぜを取らんと欲したるのみ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ここの所をよくわきまえて太祇の句を読まんと、蕪村や召波の句を読みなれて突然太祇の句を見たら、品格が悪くって光沢が少なくって、興味が索然さくぜんとしてしまうような心持がするであろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
とし詩とするには索然さくぜんたるものがあるからである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ふと、こんな小夜さよのあらしは過ぎたものの、覚一は何か索然さくぜんとしたここちで、もう琵琶を取りあげる気にもなれないでいた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう一返いっぺん最初から読み直して見ると、ちょっと面白く読まれるが、どうも、自分が今しがたはいった神境を写したものとすると、索然さくぜんとして物足りない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その中にもこの歌は字余りにしたるがため面白きものに有之候。もし「思ふ」というをつめて「もふ」など吟じ候わんには興味索然さくぜんと致し候。ここは必ず八字に読むべきにて候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
○この頃『ホトトギス』などへ載せてある写生的の小品文を見るに、今少し精密に叙したらよからうと思ふ処をさらさらと書き流してしまふたために興味索然さくぜんとしたのが多いやうに思ふ。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)