精神たましい)” の例文
わっちが弟子に来た時分は釘一本他手ひとでにかけず、自分で夜延よなべに削って、精神たましいを入れて打ちなさったから百年経っても合口えいくちの放れッこは無かったが
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時までの記章かたみにはおれが秘蔵のこの匕首(これにはおれの精神たましいもこもるわ)匕首を残せば和女もこれで煩悩ぼんのうきずなをばのう……なみだは無益むやく
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
いわゆる囘憶おもいでというものは人を喜ばせるものだが、時にまた、人をして寂寞せきばくたらしむるを免れないもので、精神たましい縷糸いとすでに逝ける淋しき時世になお引かれているのはどういうわけか。
「吶喊」原序 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「これでわしらの精神たましい曼陀羅まんだらもできるというもの」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが幾ら使っても百年も二百年も毀れずに元のまんまで居るというのア仕事に精神たましいを入れてするからの事だ、精神を入れるというのは外じゃアねえ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あなたの御家来が、出来でかしました。あなたのこの世に持っていた一城も、これでただ意味もない滅亡ではなくなりました。いえいえ、この世の中にとって、人々の精神たましいのうちに、幾代の末までも、どんなに大きな役目を
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本堂や墓場の掃除でもして罪滅しをして一生を送りいので、段々のお話で私は悉皆すっかり精神たましいを洗い、誠の人になりましたから、どうか私をお弟子にして下さいまし
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三「いさゝか待ち給え、いては事を為損しそんずるから、宜しく精神たましい臍下丹田さいかたんでんに納めて以て、即ち貴方ようく脳膸をおさめずんばあるべからず、怒然どぜんとして心を静め給え」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と死物狂いの声で呶鳴どなり立てゝ、ピン/\と鼻へ抜けて出る調子で、精神たましいはもう頭へのぼって居ます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
アハヽヽ精神たましいを籠めた処が分りましたか、わっちゃア自慢をいう事ア大嫌だいきらいだが、それさえ分ればうがす、此様こんなに瑕が付いちゃア道具にはなりませんから、持って帰って其の内に見付かり次第
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
精神たましいが沈着いて無心になれば何でもすみやかに分りまするものと見えます。