筋違すぢかひ)” の例文
神田から下谷日本橋界隈に、總髮姿で身體の利きさうな男といふと、筋違すぢかひ見附外に大道易者をしてゐる、浪人大谷道軒の外にはありません。
「へえ」と云つた野々宮君は縁側で筋違すぢかひに向き直つた。「一体そりや何ですか。僕にや意味が分らない」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
横浜から汽車が着いて改札口からはいつて来る人々は皆足早あしばやに燕のやうに筋違すぢかひに歩いて出口の方へく。
御門主 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
筋違すぢかひの広き大路には、所狭ところせきまで畳積みかさね、屏風戸障子とさうじなどもておのがじゝ囲ひたり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
筋違すぢかひを入つて此處まで來ると、いきなり後ろから、一太刀ひとたちあびせられたやうな氣がしましたか、振り向いて見る氣もしません
帰りには、暑さが余りひどかつたので、電車で飯田橋へまはつて、それから揚場あげば筋違すぢかひ毘沙門前びしやもんまへた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「この空模樣ぢや筋違すぢかひまでもちませんぜ。お通は仕度をして居る筈ですから、兎も角晴らしてから出かけませう」
青い空の静まり返つた、上皮うはかはに、白い薄雲うすぐも刷毛先はけさきで掻き払つたあとの様に、筋違すぢかひに長く浮いてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「側へよつて首實檢くびじつけんをしようと思つたが、何うしてもつらを見せねえ、後ろから覗くやうにすると、いきなり筋違すぢかひ見附の方へスタスタ驅け出すぢやありませんか」
離れてむかふに置いた大きなとらの皮も其通り、すはための、設けのとは受け取れない。絨氈とは不調和な位置に筋違すぢかひに尾を長くいてゐる。すなかためた様な大きなかめがある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
場所は筋違すぢかひ御門(今の萬世橋)の籾御藏跡もみおくらあとあたりから、片側町の柳原を、和泉橋から新し橋を經て、淺草御門前の郡代屋敷あたりまで、かなりの長丁場ですが、昔は恐ろしく淋しいところ。
大きな財布で懷ろをふくらましてよ。頭巾か何んかで顏を隱して、筋違すぢかひひから兩國までを、二三度歩くんだな——いや二度で澤山だ、往きと歸りだ。——よく晴れた、月のない晩といふと丁度今頃だ。