符合ふごう)” の例文
それというのは、この話はすべてその昔に私が見知っている……今はこの世にいない人たちの様子や特別な風習に符合ふごうしているからです。
自己の希望がものの符合ふごうすればよいが、なかなかそううまくゆくことがすくないから、結局感情にられてすことは、そむくこととなりやすい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「いえいえ、それもよく符合ふごうします。……山はひがしよ、とあるのは山東さんとうのこと。家木かぼくはみだすよ、とは『宋』の文字を、分解したものでございましょう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家を飛び出した時にはどんな物を着ていたかとくと、四入り青梅の単衣ひとえでこうこういう縞柄だという。それがぴったり符合ふごうしていりゃあ、もう占めたものだ。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わけのわからない符合ふごうは、偶然だとして片づけようとなさる。しかしですね、人間には、ただ事実だけがあって、人間は、その事実の責任をとらなくっちゃいけないんだ。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
という話に、私はかつて故郷を出際でしなに我が親友島村清吉という方が私に対し歌を一首送られた、その歌と今ブ師の言うた事とちょうど符合ふごうして居るように思いますから歌で答えました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
多年来たねんらい西洋の書をこうじて多少に得たるところのその知見ちけんも、今や始めて実物じつぶつに接して、おおい平生へいぜい思想しそう齟齬そごするものあり、また正しく符合ふごうするものもありて、これをようするに今度の航海は
と、思わず、おうむ返しに眼八の返辞が出たのは、胸で繰ッていた日数から推して、それが、ぴったりと四国屋の商船あきないぶねが、大阪表から阿波へさして出た日に符合ふごうしていたので。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その一周忌いっしゅうきだ。妙な符合ふごうもあるものだ、と。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)