きゅう)” の例文
これらの門弟たちは、全国六十余州からきゅうを負って集ったもので、全然門弟の来なかったはんは、たしかに二つくらいしかない。
淡窓先生の教育 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
三津ヶ浜というのは松山藩時代の唯一の乗船場で、私たちが初めてきゅうを負うて京都に遊学した頃はまだこの三津ヶ浜から乗船したものであった。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「われはきゅうをみやこに負い来れど、いまわれ破れてむなしく帰る」とか又は「ここよりして、遠く故郷の空気をかぐ。此処よりしてわが願いは空し。」
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
同時に語学を稽古する場所としては倫敦ロンドンもっとまされるを認めたり。ここにおいてこの地にきゅうおろす。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十六歳の少年ドヴォルシャークは、ようやくきゅうを負うて首都プラハにおもむき、ボヘミア教会音楽協会のオルガン学校に入学し、本式に音楽修業にいそしむことが出来たのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
毅堂はきゅうを負うて江戸に出でてより二十年にして始めてにしきて故郷に還ったのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こいねがわくは吾が党の士、千里きゅうにのうてここに集り、才を育し智を養い、進退必ず礼を守り、交際必ずを重じ、もって他日世になす者あらば、また国家のために小補なきにあらず。
慶応義塾の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
少年からきゅうを負うて、洛陽に遊学し、大学を出てからも、放蕩任侠、後にやっと、宮門の警吏になって、久しく薄給で、しらみのわいているような一張羅の官服で、大言ばかり吐いていたのだから
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
詩人と画家とその卵子たまごたちが、きゅうを負って集まる桃源境アルキャデアなのだ。
きゅううて
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)