竹槍たけやり)” の例文
あの中にあんな綺麗きれいな着物を着た御嫁さんなんかがいるんだから、もったいない。光秀はなぜ百姓みたように竹槍たけやりを製造するんですか。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の金瓶に行つたころは、村民が竹槍たけやり稽古けいこをしてゐた時分で、競馬場あとに村民が集まり、寺の住職などもそこで竹槍の稽古をした。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
明はもう一枚、雨戸を開けて待構えて、気分はどう?まあ、こちらへ、と手伝って引入れた、仁右衛門の右の手は、竹槍たけやりを握っていたのである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、既にその時、手に手に竹槍たけやりや、蕃刀やをげた百五十人ばかりの蕃人が、雪崩なだれをうって場内に駈けこんできたのに、人々は気がついた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
真実まことか、竹槍たけやりの先につるしたむしろの旗がいつ打ちこわしにかつぎ込まれるやも知れなかったようなうわさが残っていて
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
みんなは、に、武器ぶきっていました。それは、竹槍たけやりや、たまたま海岸かいがんげられた難破船なんぱせんいている、鉄片てっぺんつくられたつるぎのようなものでありました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
莫迦ばかをいうな。貴様みたいに、戦闘をはじめる途端に数値のことを忘れてしまうようじゃ、どうせろくでもない敵兵に横腹よこっぱら竹槍たけやりでぶすりとやられるあたりが落ちさ」
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのたんびに竹槍たけやり突撃の猛訓練などがあり、暁天動員だの何だの、そのひまひまに小説を書いて発表すると、それが情報局に、にらまれているとかいうデマが飛んで
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「落ちて來さへすれア、ボチヤンとか何とか音がするだらう——萬一舟から岸へ這ひ上がるやうなら、竹槍たけやり芋刺いもざしにするつもりで待つて居るが、一向音沙汰はねえぞ」
竹槍たけやりをしごいて戦車に立ちむかい土人形の如くにバタバタ死ぬのがいやでたまらなかったのではないか。戦争の終ることを最も切に欲していた。そのくせ、それが言えないのだ。
堕落論〔続堕落論〕 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
けれど、その光秀みつひでじしん、悪因悪果あくいんあっか土冠どこう竹槍たけやりにあえない最期さいごをとげてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土民らはまた蜂起ほうきして反対党の先鋒となり、竹槍たけやり蓆旗むしろばたを立てて襲って来たので、彼の同志数十人はそのためにたおれ、あるものは松平周防守まつだいらすおうのかみの兵に捕えられ
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「よし心得た。宙に留めて竹槍たけやり芋利いもざしだ」