端山はやま)” の例文
湖を圍む低い端山はやまの列も黒かつた。物洗ひ場かとも見ゆる簡單な船着場に二三度船は止つて、一時間もした頃館山寺くわんざんじに着いた。
梅雨紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
広い端山はやまの群った先は、白い砂の光る河原だ。目の下遠く続いた、輝く大佩帯おおおびは、石川である。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
可厭いやよ、私は、そんなに酔つてゐちや。不断きらひの癖に何故なぜそんなに飲んだの。誰にのまされたの。端山はやまさんだの、荒尾さんだの、白瀬さんだのが附いてゐながら、ひどいわね、こんなによはして。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
西ははるかに水の行衛ゆくえを見せて、山幾重雲幾重、鳥は高く飛びて木の葉はおのずから翻りぬ。草苅くさかりの子の一人二人、心豊かに馬を歩ませて、節面白くうたい連れたるが、今しも端山はやますそを登り行きぬ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
そこらくは萌ゆる端山はやま藪雑木やぶざふき春の鳴る瀬のかがよひにけり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鹿は深山みやまをこのまず、おほかたは端山はやまるもの也。
一行のかり端山はやまに月を印す
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
さねぐみし茱萸ぐみは、端山はやま
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
風高し端山はやま艸山くさやま
秋日口占 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
もう梢を離れるらしい塒鳥ねぐらどりが、近い端山はやま木群こむらで、羽振はぶきの音を立て初めている。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
小岱山せうたいさん霞むおもて端山はやまには関の名残りの書院松見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一行ひとつらの雁や端山はやまに月を印す
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
もう塒を離れるらしい朝鳥が、近い端山はやまの梢で、羽振はぶきの音を立て初めてゐる。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
端山はやまの広いむらがりのさきは、白い砂の光る河原だ。目の下遠く続いた輝く大佩帯おほおびは、石川である。その南北に渉つてゐる長い光りの筋が、北の端で急に拡つて見えるのは、凡河内おほしかふちの邑のあたりであらう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)