空隙すき)” の例文
私は彼の心に何か知ら空隙すきの出來たことを感じた。そして其の空隙を、彼が我々によつて滿たさうとしてはゐないことをも感じてゐた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
つまり二重に張った天井の中間がようように腹ばいにはえるくらいの空隙すきになっていて、それが家じゅうの天井をおおいつくしていた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たゞ、三角測量臺かくそくりやうだい見通みとほしにさはためはらはれた空隙すきがそれをみちびいた。東隣ひがしどなり主人しゆじん屋根やねの一かくにどさりととまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
動機をしっくりと包んでいるその五芒星円ペンタグラムマには、いかなるメフィストといえども潜り込む空隙すきはございません。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その空隙すきをふさぐ幾億兆の群集。——わたしは「ほとけの畠」の、あの目こぼれを啄む、一羽の禽に、どうやらてきてゐる。しかも、零落おちぶれた一羽のからすに。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)