祭礼おまつり)” の例文
旧字:祭禮
やっぱり、夢ににぎやかなところを見るようではござんすまいか。二歳ふたつ三歳みッつぐらいの時に、乳母うばの背中から見ました、祭礼おまつりの町のようにも思われます。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何しろ極く狭い田舎なので、それに足下あしもとから鳥が飛立つ様な別れ方であつたから、源助一人の立つた後は、祭礼おまつり翌日あくるひか、男許りの田植の様で、何としても物足らぬ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
門内に渡り廊下の長い橋のある馬込まごめさんという家があったが、そこの女中がお竹大日如来だったのだといって、大伝馬町の神輿おみこし祭礼おまつりの時、この井戸がよく飾りものに用いられたが
そこでは「祭礼おまつり」が催されていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
五目の師匠も近所なり、近い頃氷川様の祭礼おまつりに、踊屋台の、まさかどに、附きっきりで居てから以来、自から任じて、滝夜叉たきやしゃだから扱いにくい。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私が六歳むつつ位の時、愛宕あたご神社の祭礼おまつりだつたか、盂蘭盆うらぼんだつたか、何しろ仕事を休む日であつた。何気なしに裏の小屋の二階に上つて行くと、其お和歌さんと源作叔父が、藁の中に寝てゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
喜多村の新派の頭立かしらだった人が応援して、諸方からの花輪、飾りもの、造りもの、つみものなどによってにぎわしく、貞奴の部屋や、芝居の廊下はおさらい気分、祭礼おまつり気分のように盛んな飾りつけであった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
仏様でも大事ない、氏神にして祭礼おまつりを、と銑さんに話しながら見て過ぎると、それなりに川が曲って、ずッと水が狭うなる、左右は蘆がびょうとして。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ足りないで、あかりを——燈を、と細い声して言うと、土からもけば、大木の幹にも伝わる、土蜘蛛だ、朽木だ、山蛭やまひるだ、おれ実家さと祭礼おまつりの蒼い万燈、紫色の揃いの提灯、さいかちいばらの赤い山車だしだ。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)