祝盃しゅくはい)” の例文
三吉が立って水を眺めているうちに、女中がぜんを運んで来た。一番いける口の榊は、種々な意味で祝盃しゅくはいを挙げ始めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二杯の祝盃しゅくはいに顔が赤くなって、その場にいたたまらなくなったほどの可愛らしい花嫁であった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
一面のS文学士とMとがやって来て、「失われそうにして助かった幸運なる君が生命のために祝盃しゅくはいげようじゃないか」と言った。すると、すぐ前の卓にいたAが頭をもたげて
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
あるひは兵卒へいそつ頸筋元くびすぢもと駈𢌞かけまはる、するとてきくびゆめやら、攻略のっとりやら、伏兵ふせぜいやら、西班牙イスパニア名劍めいけんやら、底拔そこぬけ祝盃しゅくはいやら、途端とたん耳元みゝもと陣太鼓ぢんだいこ飛上とびあがる、さます、おびえおどろいて、一言二言ひとことふたこといのりをする
半蔵とてもその席に一座して交際上手じょうずな人たちから祝盃しゅくはいをさされて見ると、それを受けないわけに行かなかったが、宿方の用事で出て来ている身には酒も咽喉のどを通らなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)