石筆せきひつ)” の例文
金のせきばんの上に、ダイヤモンドの石筆せきひつで字をかいて、本でよんだことは、そばからあんしょうしました。
自分は何となく自ら進んで其の危難にちかづきたいやうな夢現ゆめうつゝの心持になつた。石筆せきひつや鉛筆なぞを口のはたまで持つて行つては、自分から驚いて泣き出した事があつた。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
乃公だって時計の針ぐらいは分るのだけれども、寒くて手が亀屈かじかん石筆せきひつが持てないから仕方がない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
鉛筆と紙のときは、ヒルム式な連鎖描きとし、石盤せきばん石筆せきひつのばあいは、一場面一場面、描いては消し、描いては消し、かつ思いつきの筋を喋っていくのだからずいぶん忙しい。
龍華寺の坊さまにいぢめられんは心外と、これより学校へ通ふ事おもしろからず、我ままの本性あなどられしが口惜しさに、石筆せきひつを折り墨をすて、書物ほん十露盤そろばんも入らぬ物にして
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
石筆せきひつに堅いのと柔かなのとあって、堅いのを細く削って書くのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
龍華寺りうげじぼうさまにいぢめられんは心外しんぐわいと、これより學校がくかうかよことおもしろからず、わがまゝの本性ほんせうあなどられしが口惜くやしさに、石筆せきひつすみをすて、書物ほん十露盤そろばんらぬものにして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くるみ割はとんぼ返りをうちますし、石筆せきひつ石盤せきばんの上をおもしろそうにかけまわりました。それはえらいさわぎになったので、とうとうカナリヤまでが目をさまして、いっしょにお話をはじめました。