眼鏡橋めがねばし)” の例文
日本橋附近という題目からはやや遠くなるけれども、あの眼鏡橋めがねばし(万世橋)あたりのさまも次手ついでにここに書き残して置きたい。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
明治六年筋違見附すじかいみつけを取壊してその石材を以て造った眼鏡橋めがねばしはそれと同じような形の浅草橋あさくさばしと共に、今日は皆鉄橋にけ替えられてしまった。
運河には石の眼鏡橋めがねばし。橋には往来わうらい麦稈帽子むぎわらばうし。——忽ちおよいで来る家鴨あひるの一むれ。白白しろじろと日に照つた家鴨の一むれ。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
眼鏡橋めがねばしを渡ってから突き当たりの大時計は見えながらなかなかそこまで車が行かないのをもどかしく思った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
お庄は広々した静かな眼鏡橋めがねばしの袂へ出て来た。水の黝んだ川岸や向うの広い通りには淡い濛靄もやがかかって、蒼白い街燈の蔭に、車夫くるまやの暗い看板が幾個いくつも並んでいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その頃まだ珍らしい見物みものになっていた眼鏡橋めがねばしたもとを、柳原の方へ向いてぶらぶら歩いて行く。川岸の柳の下に大きい傘を張って、その下で十二三の娘にかっぽれを踊らせている男がある。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
学生時代に東京へ出て来て物珍しい気持ちで町を歩いているうちに偶然出くわして特別な興味を感じたものの一つは眼鏡橋めがねばしすなわち今の万世橋まんせいばしから上野うえののほうへ向かって行く途中の左側に二軒
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
眼鏡橋めがねばしくぐりゆく水のをりをりに深く耀きやがて消えつも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
眼鏡橋めがねばしを中にわたして茶屋三戸ここのくるわは日の照るばかり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
白くして悩める眼鏡橋めがねばしのうへを
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)