まこ)” の例文
旧字:
それはまことに日本文化のために結構な事であるが、それだけ一般化され、民衆化され、平凡化されて来た芸術の仕事の上においては
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
と云ふと橋本がソラ見よ皆来て誤れ/\、と云つて、此奴は一番酔つた奴、彼奴は二番三番と一々指さすと皆平伏してまことに悪うご座りましたと誤つて居りました。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
坊さんは「知り申さぬ」と答えて「まだまことの道に入りたもう心はなきか」と問う。女きっとして「まこととは吾と吾おっとの信ずる道をこそ言え。御身達の道は迷いの道、誤りの道よ」
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親も大事金も大事しばし夜歩きも出来ずに居る仮の神妙が、まことの念いをます/\募らせて、今ごろは小歌はどうして居るか、浜田の御前か黒の羽織か、まさかこの貞之進を忘れもしまいと
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
芸術家の至上主義がこうじると生活が乱れやすいが、老人のこの主義はまことに安全だから結構だと思って見たりした。甚だ合理化された避暑法だ。
私たちのその安宿というのは、まことに田舎風の古めかしい家だった。この宿にジョセフィンという女中がいた。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
真夏においてことに閉口しているのを私はよく見る、じっとしていても汗をだらしなく流しているさまは、まことに気の毒な位いである、歩けば股摺またずれがして痛いのだ
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
大阪の紳士が電車の中などで、時に喧嘩けんかをしているのを見る事があるが、それはまことに悲劇である。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
それに彩色を施して、そのまま貼りつけてあるのがあります、表現法としてはまことに思い切った不精ぶしょうなやり方で、近頃の二科あたりの連中の仕事にも似て面白いと思います。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ところが最近、その松が枯れてしまい今は骨のみ立っていてまことに淋しくなってしまった。そしてその府庁舎は空家あきやとなり、この先き、この風景はどんな事になって行くか、私は心細い。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そしてしかも平気ですましていたりしては、まことに悲しい滑稽こっけいに外ならない。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
日本人にとってはまことに学びやすい処の都合よきものであったのである。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)