べう)” の例文
しかし山石の苔に青み、山杏さんぎやうの花を発した景色はべうたる小室翠雲は勿論、玉堂鉄翁も知らなかつたほど、如何にも駘蕩と出来上つてゐる。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
はじめ、もうのあたりから、やまべうとして諏訪すはみづうみみづよしいてはたが、ふと心着こゝろづかずにぎた、——にして、をんなあとばかりながめてたので。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私も決して喜んで行かうとは思ひませぬ、乍併しかしながら、私共同志者の純白の心事が、斯かることの為に、政府にも国民にも社会一般に説明せられまするならば、べうたる此一身にとつ此上こよなき栄誉と思ひます
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
つまり二千余年の歴史はべうたる一クレオパトラの鼻の如何につたのではない。むしろ地上に遍満した我我の愚昧ぐまいに依つたのである。哂ふべき、——しかし壮厳な我我の愚昧に依つたのである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)