相食あいは)” の例文
善悪美醜幸不幸なにがその本体やらコントンとして分ちがたい物質精神相食あいはみ相重りわけの分らぬものが出来上つたのだらうと思ふ。
次いで糧食乏しくなりて人相食あいはむにおよんだ、その時一婦人坐して餓死するよりはいっそインディアンか野獣に殺さるるがましと決心して
われわれが再び人類相食あいは野蛮やばんな戦争をしないように、そのいましめの記念塔として、あのままおいた方がいいということになったのです。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうした世に生きる人間どもは、必然、功利に溺れ、猜疑さいぎ深く、骨肉相食あいはみ、自己をかえりみず、利をれば身をほろぼし、貧に落つれば、人のみをのろう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その鎌倉には幕政時代の終りごろまで百四五十回の地震があって、骨肉相食あいはんだ鎌倉史の背景となって、陰惨な色彩をいやがうえにも陰惨にして見せた。
日本天変地異記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
せめては骨肉相食あいはむような不幸な家庭、儕輩さいはい相※あいせめぐようなあさましい人間の寄り合いを尋ね歩いて、ちぐはぐな心の調律をして回るような人はないものであろうか。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかしありも戦争をする。はちもする。がまもする。その外よく見ると獣も魚も虫も皆たがい相食あいはむ。草木の類も互に相侵あいおかす。これも悲しいことだ。何だか宇宙の力が自然にそうさすのではなかろうか。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
文字どおり骨肉相食あいはむの惨をえんじた悪夢の一戦も、新院方(崇徳上皇)の敗北に帰して、内裏方だいりがた(御白河天皇)では乱後、戦犯の元凶を、追捕ついぶするのに急でした。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われわれ地球に棲息する人類は、骨肉相食あいはむ闘争を即時中止し、全人類一致団結して、やがて侵入して来ようとするウラゴーゴルに対する戦闘準備を考究しなければならぬ。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)