相対さしむかひ)” の例文
旧字:相對
突然な斯の来客の底意の程も図りかね、相対さしむかひすわる前から、もう何となく気不味きまづかつた。丑松はすこしも油断することが出来なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うむ、彼方あつちに支度がしてあるから、来たら言ひに来る? それは善い、西洋室の寄鍋なんかは風流でない、あれは長火鉢ながひばち相対さしむかひに限るんさ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『いや、どうも、寒いの寒くないのツて。』と敬之進は丑松と相対さしむかひに座を占めて、『到底とても川端で辛棒が出来ないから、めて帰つて来た。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
山田やまだ書斎しよさいは八ぢやうでしたが、それつくゑ相対さしむかひゑて、北向きたむきさむ武者窓むしやまど薄暗うすぐら立籠たてこもつて、毎日まいにち文学の話です、こゝ二人ふたりはなならべてるから石橋いしばししげく訪ねて来る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
応接室には校長と郡視学とが相対さしむかひに成つて、町会議員の来るのを待受けて居た。それは丑松のことに就いて、集つて相談したい、といふ打合せが有つたからで。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)