直垂ひたゝれ)” の例文
赤地あかぢ蜀紅しよくこうなんど錦襴きんらん直垂ひたゝれうへへ、草摺くさずりいて、さつく/\とよろふがごと繰擴くりひろがつて、ひとおもかげ立昇たちのぼる、遠近をちこち夕煙ゆふけむりは、むらさきめて裾濃すそごなびく。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
骨組のたくましい大男で、頭に烏帽子ゑぼしを戴き、身に直垂ひたゝれを著、奴袴ぬばかま穿いて、太刀たちつてゐる。能呂は隊の行進を停めて、其男を呼び寄せさせた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
討手うつての大將、三位中將維盛卿これもりきやう赤地あかぢの錦の直垂ひたゝれ萌黄匂もえぎにほひの鎧は天晴あつぱれ平門公子へいもんこうし容儀ようぎに風雅の銘を打つたれども、富士河の水鳥みづとりに立つ足もなき十萬騎は、關東武士の笑ひのみにあらず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
それなら薬師くすしをつかわすから療治をするがよいと云う仰せがあって、間もなく宿へ薬師が参りましたので、起き直って、烏帽子えぼし直垂ひたゝれをつけて対面しましたところが、ちょっと脈を取ってみて
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(金窪兵衞尉行親、三十餘歳。烏帽子、直垂ひたゝれ、籠手、臑當にて出づ。)
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)