病床とこ)” の例文
然るに昨夕さくせきのこと富岡老人近頃病床とこにあるよしを聞いたから見舞に出かけた、もし機会おりが可かったら貴所の一条を持出す積りで。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
孔子が病床とこについて以来、彼は殆どつきっきりで、夜の目も寝ずに看護をして来た。もうそろそろひと月にもなろうというのに、病勢はただつのる一方である。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「気のせいか、今年は木犀の花も薬のようなにおいに感じる。この冬は、わしは病床とこにつくかもしれない」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見よう見まねで、静子の二人の妹——十三の春子に十一の芳子、まだ七歳ななつにしかならぬ三男の雄三といふのまで、祖父母や昌作、その姉で年中病床とこについてゐるお千世ちせなどを軽蔑する。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夫れを嘆く間もなく又た父が病床とこに就くように成りこれも二月ばかりで母の後を逐い、三人の児は半歳のうちに両親ふたおやを失って忽ち孤児みなしごとなった。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
帯紐おびひもかず七、八日は必死に看病をしたけれど、とうとう病床とこに就いたままってしまったんですよ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ぢやモウ、病床とこに就いたの?』と低目に言つて、胡散臭うさんくさい眼付をする。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『そうでもない。秋口から、風邪をこじらせて、二月ほど病床とこに、仆れていた』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「昨日は、風邪で、道場へ参れず、残念でした。しかし、おめでとう存じます。先刻、叔父御の声を洩れ聞きますと、明晩は、ご披露ひろうのお祝いとやら、拙者も、病床とこを上げてしまいました」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも、武大さんが病床とこについたのは、それからのことで、その日以後は、いつも見える公園にも饅頭売りに出なくなった。——と、すぐ四、五日してから死んだという世間の噂だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初めて、お病床とこにおつき遊ばしたのは、ちょうど正月二日でございました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息子の挙式がきまってから、貞氏も病床とこを払って起きていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝麿あさまろは、見ちがえるほど恢復かいふくして、病床とこを離れていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)