球磨くま)” の例文
山を越えて肥後の球磨くま郡に入ると、近山太郎、中山太郎、奥山太郎おのおの三千三百三十三体と唱えて、一万に一つ足らぬ山の神の数を説くのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿児島を出でて人吉ひとよしに入り、さらに自動車を駆つて球磨くま川沿ひの林温泉に泊ることにした。
八月の霧島 (新字旧仮名) / 吉田絃二郎(著)
これも私の二十二三のときの夏のことで、九州へ行つたときであるが、汽車が熊本へ這入はいり、球磨くま川の急流に沿つて沢山のトンネルを抜けては出、抜けては出てゐる最中である。
琵琶湖 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
流れる球磨くま川をさらに十何里も東北へさかのぼつた日向ひうがとの国境ひの川——その山を
お茶好き小話 (新字旧仮名) / 吉野秀雄(著)
この蘇川峡のみをもってすれば、その岩相がんそう奇峭きしょうほう耶馬渓やばけい瀞八丁どろはっちょうしんの天竜峡におよばず、その水流の急なること球磨くま川にしかず、激湍げきたんはまた筑後川の或個処あるかしょにも劣るものがある。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
球磨くま川の淺瀬をのぼる藁船は燭奴つけぎの如き帆をみなあげて
長塚節歌集:3 下 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
九州でも熊本県の球磨くま郡をはじめ、ままごとをキャクナンドというところは多いようである。遊戯中心の移るにつれて、新しい名も次々に生まれている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このあした球磨くまの新茶をすすろへば目にうつるものなべてすがすがし
お茶好き小話 (新字旧仮名) / 吉野秀雄(著)
熊本県の球磨くま葦北あしきた二郡、それからずっと飛んで信州の下高井郡、越後えちご魚沼うおぬま地方、秋田県の仙北郡および岩手県上閉伊かみへい郡の一部に、炉をジロとう方言があるほかに
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとえば球磨くま郡の五木いつきでは、終日雨の旅宿でうぐいすの声ばかり聴いて暮したことがあったが、ホケキョと三音に鳴くのは二十回に一度くらいなもので、普通はきまって四声ずつ続けていた。
これは肥後ひご球磨くま地方の、モウゾウ隠れ(隠れんぼ)の歌であった。これよりも一段と劇的なのは今も田舎いなかに残っている狐遊きつねあそび、大阪でもと「大和やまとの源九郎はん」などといった鬼ごとである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
サド 同 球磨くま