玄米くろごめ)” の例文
生味噌と梅干と玄米くろごめの飯という簡単なものであったが、夜来の空腹は、これに舌鼓したつづみを打ってむつみ合うに充分なほど、人々の慾を謙虚けんきょにしていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「芸」の迫真の何たるかの奥秘を悟りつくしているものといわなければならない、お露の名が圓朝を贔屓にした北川町の玄米くろごめ問屋近江屋の嫁の実名であり
二十五の前厄まえやくには、金瓶大黒きんぺいだいこくの若太夫と心中沙汰になった事もあると云うが、それから間もなく親ゆずりの玄米くろごめ問屋の身上しんじょうをすってしまい、器用貧乏と、持ったが病の酒癖とで
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
五合ばかりの玄米くろごめを、徳利の中へ無造作に入れてかしの棒でコツコツくのであって搗き上がるとそれをふるいにかけその後で飯にかしぐのであった。彼は徳利搗きをやりながらも眼では本を読んでいた。
開運の鼓 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
玄米くろごめもみがらくさきいひながらほかほかとめばあたたまるもの
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕方の仕掛に忙しい鍋釜なべかまだの、野菜物だの、玄米くろごめだのを洗っているこの附近の長屋女房のかしましい群れに、じっとそそいでいるらしいのである。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これもそのころあった実話の主人公は北川町の飯島喜左衛門とて圓朝贔屓の大きな玄米くろごめ問屋さんだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
このため、勘定奉行の荻原近江守は、八州の代官に下知げじして、たか百石について一石ずつの犬扶持いぬぶちを課し、江戸の町民へは、一町ごとに、玄米くろごめ五斗六升の割で、徴発を令した。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義貞は、自分も手づかみで取っていた玄米くろごめのにぎり飯を盛った大鉢を眼でさしながら
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも賃銀は、一作の仮面めんも、なお一俵の玄米くろごめにもならぬ程だそうである。でも不足顔ではない。充ちきっている。しかもこの芸魂の物はあとにのこり、世々の人を愉しませるにちがいない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
官兵衛は兵糧方が配っていた玄米くろごめの握り飯を一つ持って、床几場の陣幕外とばりそとに立ってむしゃむしゃ喰っていた。思えば今暁こんぎょうの一刻こそ、実に危うい境ではあったと、今更ほっと吐息が出てくる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わんに盛った玄米くろごめと、胡麻揚ごまあげをのせた木皿とが、山伏の前に置かれた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何たッて、黒谷くろだにの欲ばり尼が相手だから、安いものしろじゃ、換えッこねえ。玄米くろごめ一提ひとさげに、おれの胴着一枚よこせと、吹ッかけやがったが、値打は、たっぷりと見て、買うてやった。……どうだ、この童は」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四 現給の玄米くろごめを中等度にまで精白しらげて貰いたい。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄米くろごめのにぎり飯。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)