猛々たけ/″\)” の例文
娘を殺したのがお狩場の四郎だつたら、飛びかかつて、噛み殺しもし兼ねまじき、動物的な本能の怒りが、この老人を一しゆん此上もない猛々たけ/″\しいものに見せるのです。
手品師はきつと真面目まじめな顔にかへつて、右手に少し長い刀を取り上げた。緊張がしばらく彼の顔にみなぎる……額のあたりが少しあをざめて、眼が猛々たけ/″\しく左腕に注がれた。
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
猛々たけ/″\しい犬は、小屋をも遠巻きに取巻いて、波のように、うごめき呻っていた。月のかげんで、眼だけが、けい/\と光っているのも見えた。すぐさま、彼等は、銃を取った。
前哨 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
しかし、この猛々たけ/″\しい喜びも、はやまつてゐた脈搏がしづまると同じはやさで鎭まつていつた。
高手小手にいましめたりかゝりし程に兩人の者共大いに驚き是は何故なにゆゑなげきければ越前守殿呵々から/\と笑はれ盜人ぬすびと猛々たけ/″\しとは汝等が事なり其金子は此間ぬすまれし者有てとくに此方へ訴へたり然るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
口の大きいのと出張つた頬骨のために、一層猛々たけ/″\しく意地悪さうに見えるが、然しその子供らしい小さなしよんぼりした眼と、愛嬌のある口元とが、どうやら程よく其表情をやはらげてゐる。
人妻 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
變て申に久兵衞は冷笑あざわら否々いや/\人は見かけに寄ぬもの其時其所そこ居合ゐあはせたは文右衞門殿ばかりゆゑ盜まれたるに相違さうゐなし盜人ぬすびと猛々たけ/″\しとは此事なりと云ひければお政は彌々いよ/\やつ氣となり私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ば見た事もなしと云しが扨々俗家に云ぬす猛々たけ/″\しとは汝が事なり今更かゝる惡人にかはことばはなけれども釋迦しやかは又三界の森羅しんらしやう捨給すてたまはず汝の如き大惡人ぜん道にみちびき度思ふがゆゑ及ばずながら出家につらなる大源が申處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)