片膚かたはだ)” の例文
トウン——と、足拍子を踏むと、膝を敷き、落した肩を左から片膚かたはだ脱いだ、淡紅の薄い肌襦袢はだじゅばんに膚が透く。眉をひらき、瞳を澄まして、向直って
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
数秒の後、まぶしい深紅しんくの光がえがいてあらわれたと思うと、数十本の櫟の幹の片膚かたはだが、一せいにさっとあわい黄色に染まり、無数の動かない電光のようなしまを作った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いで夏の日の眠気覚しに、泰助が片膚かたはだ脱ぎて、悪人ばらの毒手のうちより、下枝姉妹きょうだいを救うて取らせむ。証拠を探り得ての上ならでは、渠等かれらを捕縛は成り難し。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なまぬるい風のような気勢けはいがすると思うと、左の肩から片膚かたはだを脱いだが、右の手をはずして、前へ廻し、ふくらんだ胸のあたりで着ていたその単衣ひとえまるげて持ち、かすみまとわぬ姿になった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なまぬるいかぜのやうな気勢けはひがするとおもふと、ひだりかたから片膚かたはだいたが、みぎはづして、まへまはし、ふくらんだむねのあたりで単衣ひとへまろげてち、かすみまとはぬ姿すがたになつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)