爪印つめいん)” の例文
おとして川へ投入なげいれたるに相違これなく候御定法通ごぢやうほふどほ御所刑おしおき仰せ付られ下され度と申立てければ伊藤は聞て然らば傳吉の口書を以て爪印つめいん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんでたまろうかい兄弟の調べもほんの形ばかり、拷問ごうもん爪印つめいんの強制、大牢送りの宣告と、わずか二日ほどのうちにかたをつけられ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのとき」と忠太が証文に爪印つめいんすような口ぶりで云った、「いのちがけだって泰二が云ったのも覚えてるだろう」
源蔵ヶ原 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それからいったん役人の前を下がり、門前で髪を結って、またまた呼び出された上で最後の御免の言葉を受けた。読み聞かせられた書付は爪印つめいんを押して引き下がった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここの処へただちょっとお前の前肢まえあし爪印つめいんを、一つ押しておいて貰いたい。それだけのことだ。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
警察へ行つてこれこれだと申上げると、警部さんが一一聞き取つて、何やら書いたものに判を押せと仰有おつしやるんです。判は持参致しませんと申しましたら、爪印つめいんでもいいつて仰有るんでせう。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
只親指に墨を塗り姓名の下に押す、即ち拇印ぼいん爪印つめいんとも申ます、平常ふだん実印を用いても、ごく八釜やかましい事、即ち調べを受けて証拠でも取られるというような時に至って、必ず拇印をいたしますが
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と父の書いた書付かきつけへ、おとよは爪印つめいんを押して、再び酒の飲み直しとなった。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「当り前だあ。その時にはモウ犯人の爪印つめいんが済んでいたかも知れん」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わかってるじゃねえか、顎化あごばけと一騎打ちに行くのだ。……口書くちがき爪印つめいんもあるものか、どうせ、拷問いためつけて突き落したのにちげえねえ。……ひとつ、じっくりと調べあげて、ぶっくらけえしてやろう。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
申付村役人共へ預けつかはす其外松本理左衞門始め吟味方役人并に九郎兵衞ふか惣内里等は爪印つめいん申付ると有て何れも口書爪印とぞなりにける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
婆と金蓮の二人にそれへ爪印つめいんさせ、名まで書かせた。同様に立会人として、近所一同の署名をい、それは折り畳んで、自分の肌身に深く仕舞い入れる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はら/\とながし齒を喰締くひしめながら爪印つめいん相濟あひすみけるに依て伊奈半左衞門殿より口書こうしよそへ委細ゐさいを書取にして手代富田善右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)