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濟難
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すみがた
落されあの印籠は大恩ある人より
紀念同樣に貰ひし品なれば失ひては
濟難し然りながら忘れて立しが此方の
過ちなれば是非もなしと
悄然として立れたり扨其後二日
程過て右の印籠を
取落し一里餘行て思出し
那は大切の品なれば紛失させては
濟難し此處迄來りて取て返へすは太儀なれども印籠には
代難しとて取て返し龜屋に至り
右の由を云て尋ねけれども一向に知れず是非なく其處を
訴へる時には
我々は
兎も
角も
仲間の
衆へ二十兩出させた
上又々
番所へ引出しては何分
氣の
毒にて
我等濟難きにより
先内々詮鑿致されよとは云ものゝ
明日の
拂ひに
困らるべければ
我等二百
兩用立んにより
夫にて
此節季は
濟さるべし
尤も此金は
利分に及ばず
御都合宜敷折返濟成るべしと金子二百兩を