源氏名げんじな)” の例文
ギンヤ——というのは、銀やと書くべきか銀弥ぎんやと書くべきか、よくわからないが、ともかくもこれがこのやしきにおける風間光枝の源氏名げんじなであった。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分の源氏名げんじなの八橋にちなんだのであろう、金糸で杜若かきつばたを縫いつめた紫繻子のふち取りの紅い胴抜きを着て、紫の緞子に緋縮緬の裏を付けた細紐しごきを胸高に結んでいた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それだのに今でも科学者はやはり水素とか酸素とかテルリウムとかウラニウムとか、言わば一種の「源氏名げんじな」のようなものをつけて平気でそれを使っているのである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それに、お前さんのようなのを小蒸気こじょうきと云ってね。『水精の蕊キヨール・ド・シレーヌ』なんて源氏名げんじながあったものねえ
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
平凡だが、これが源氏名げんじななのである。富江は黙って、奥へあごを向けた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
年増としまはまだよし、十五六の小癪こしやくなるが酸漿ほうづきふくんで此姿このなりはとをふさぐひともあるべし、ところがら是非ぜひもなや、昨日きのふ河岸店かしみせ何紫なにむらさき源氏名げんじなみゝのこれど、けふは地廻ぢまわりのきち手馴てなれぬ燒鳥やきとり夜店よみせして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
年増はまだよし、十五六の小癪こしやくなるが酸漿ほうづきふくんでこの姿なりはと目をふさぐ人もあるべし、所がら是非もなや、昨日きのふ河岸店かしみせ何紫なにむらさき源氏名げんじな耳に残れど、けふは地廻りのきちと手馴れぬ焼鳥の夜店を出して
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)