湯葉ゆば)” の例文
しかも、四周ししゅう山々に囲まれて、料理の料理とすべき海産の新鮮なさかながなかった。ここに与えられた材料は、豆腐、湯葉ゆば、ぜんまいなどであった。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
道の細くなつたり、坂になつた所になりますと私等は車を降りて歩きました。ある丘のやうになつた村では、従兄が母に命令いひつかつて湯葉ゆばを買ひに行きました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「なにこれほど御馳走があればたくさんだ。——湯葉ゆばに、椎茸しいたけに、いもに、豆腐、いろいろあるじゃないか」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
川師かわし堀武三郎の留守宅では、ちょうど四十九日の法事の読経も終って、湯葉ゆばや精進刺身のさかなで、もう坊さんが帰ってから小一時間も経ってからのことであった。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
食楽は、精進しょうじん料理がお好き。まず録糸まめそうめんにてつくる魚翅ふかのひれ湯葉ゆばでつくれる火腿ハム、たまに彼女はかつて母とともに杭州コウシュウ西湖サイこにある功徳林食処へ精進料理を味わいに行った。
新種族ノラ (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
そして街から街へ、先に云つたやうな裏通りを歩いたり、駄菓子屋だぐわしやの前で立留たちどまつたり、乾物屋かんぶつや乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、たうとう私は二條の方へ寺町てらまちさがり其處の果物屋くだものやで足を留めた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
この寺に㝫応和尚りゆうおうをしやうよろこびてこがしたる湯葉ゆばをわれに食はしむ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
前の晩にもらった折詰おりづめものだとか、買い置きの湯葉ゆばだとか、だとか、こんにゃくだとか、あるいは豆腐を使おうと、なんでも独創的に考案して、勝手にどんなふうにでもやれるのである。
鍋料理の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ちまったり、乾物屋の乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町をさがり、そこの果物屋で足をめた。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)