しか)” の例文
旧字:
敬之進は顔をしかめた。入口の庭の薄暗いところに佇立たゝずんで居る省吾を炉辺ろばたまで連れて来て、つく/″\其可憐な様子をながなが
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それが一月の末時分から口や鼻のまわりから頭髪あたまさい腫物ふきでもののようなものが出来て来たからまた医者に行って見てもらうと医者は、顔をしかめて
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
喜代子の美しい顔が引きしまって、それからしかめた泣き顔になりそうなのを、中野さんは喫驚したように眺めた。
叔父 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かの女は眼をつむってしかつらして笑い直した。そして眼を開いて真面目に返ると言った。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
三吉は、裏白の付いた細長い輪飾を部屋々々の柱に掛けて歩いたが、何か復た子供のことでお雪が気をいためているかと思うと、顔をしかめた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼女はとこから鋏を取って、口拭きの紙を切った。その不真実な行為に、啓介は顔をしかめた。
二つの途 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
仮令たとえ彼の操行は牧師達の顔をしかめるほど汚れたものであるにもせよ、あの芸術が美しくないとはどうして言えよう。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
捨吉は急にかしこまって、小さな猪口ちょくを友達の前に置いた。ぷんと香気においのして来るような熱燗あつかんを注いで勧めた。一口めて見たばかりの菅はもう顔をしかめてしまった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『むゝ——あの穢多か。』と郡視学は顔をしかめる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)