淀君よどぎみ)” の例文
天下の大阪の城を傾けた淀君よどぎみというものが、ここから擁し去られて、秀吉の後半生の閨門を支配して、その子孫を血の悲劇でいろどらしめた。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二十何万石という観覧料を払った代り一等席に淀君よどぎみ御神酒徳利おみきどくりかなんかで納まりかえって見物して居るのであった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これにくらべると、秀頼ひでよりと相抱いて城とともにほろびた淀君よどぎみの方が、人の母としては却って幸いであったかもしれない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
淀君よどぎみにうつつを抜かした秀吉が、北の政所まんどころに対する態度などにみても相当彼女を立てているところがある。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
街は雪解けで仄明ほのあかるい街のネオンサインが間抜けてみえる。かりの名をまず淀君よどぎみとしようか。蝙蝠こうもりのお安さんとしようか……。左団次の桐一葉きりひとはの舞台がまぶたに浮かぶ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
と云うのも、余人は知らず、「大阪生れ」と云うことに誇を抱いている幸子は、幼少の頃から豊太閤ほうたいこう淀君よどぎみが好きなので、関ヶ原の戦には興味が持てなかったせいでもあった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すなわち長女の茶々は、のちに大坂城での淀君よどぎみとなり、初姫はつひめ京極高次きょうごくたかつぐの室となった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北の政所まんどころとか、淀君よどぎみとかを筆頭として、京極の松の丸殿もそれに並ぶ五妻のうちの一人でした。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一の姫の茶々は、秀吉の側室に入って淀君よどぎみとなり、次の姫は、京極高次きょうごくたかつぐの正室に。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉の側室そくしつに、うら若い淀君よどぎみとかいう美女がかしずくようになって、閨門けいもんめぐる奥仕えの者たちから、いろいろな曲事ひがごとが聞えて来ても、その寛やかな彼女の胸に、小波さざなみも立てることはできなかった。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)