よだ)” の例文
土間に、置きすててあるおいずるを、老人はひっくり返して、あわただしくあらためた。赤いよだかけをした地蔵如来、幾つもの巾着、守札まもりふだ、椿の花——
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(牛の肉の中で一番上等がの舌だといふのは可笑をかしい。よだれで粘々ねばねばしてる。おまけに黒い斑々ぶちぶちがある。歩け。こら。)
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
先生はよだれをたらして、この壮観を見、これなら贅沢ぜいたくな冬がすごせるぞ、と思った。
いつも派手な色の、ま新しいよだれかけを、必ず二三枚は胸にあてていられる。村のはすっぱな娘たちが、前かけや、羽織裏などのともぎれで作っては、人知れずおそなえするからである。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
汗とよだれが哀愁と憤怒の表情のまま氷りついた顔皮を、びっしょり濡らしていた。
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
(牛の肉の中で一番上等じょうとうの舌だというのは可笑おかしい。よだれで粘々ねばねばしてる。おまけに黒い斑々ぶちぶちがある。歩け。こら。)
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
鉋音かんなおとを止めて、職人たちは、後ろを見た。板小屋の横の板束の上に、清水一角は、よだれをたらして、寝ていた。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
肩をすぶると、上りがまちにしゃがみ込んで、踏み板へ、よだれを垂らしていた内蔵吉は
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そらの魚のよだれはふりかかり
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)