浩瀚こうかん)” の例文
しかるに、その全部の紙数二千六百ページに余るほどのすこぶる浩瀚こうかんの大書籍なれば、世間よくこれを通読するものいたって少ない。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
支倉は一方裁判長にかくの如き浩瀚こうかんなる書類を出すと共に、一方庄司署長、神戸牧師に恨みの手紙を出す事は少しも怠らなかった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
彼の著作は、今浩瀚こうかんなる十七巻の全集として行われているが、その内容を検して見ると、その著述の多種多方面なること実に驚くのほかはない。
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
私にはあの浩瀚こうかんなローマ衰亡史の著者しか思い当らないのだが、よく聞くと、パラオでは相当に名の聞えたインテリ混血児(英人と土民との)で
それに就て徳川時代に来朝した蘭人殊にシーボルト先生は、我国の地理風俗特に動植物を研究して幾多の標本をもたらし帰り、浩瀚こうかんな書物を著わしているので
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
国体をあきらかにするための浩瀚こうかんな書物の版行はんこう湊川みなとがわのご建碑、事々にけっこうなお企てと思っておる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの浩瀚こうかんな大般若数百巻は、悉く空を説いてゐるのである。幻滅などは何遍も何遍も繰返してゐる。
雨の日に (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
その一は、「塵芥集」は全部一百六十九条よりなり、「貞永じょうえい式目」に比してその条数三倍以上であるから、武家の法典中最も浩瀚こうかんにして且つ最も周密なるものであること。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
スタインの専門的な探険報告や燉煌絵画のような浩瀚こうかんなものには手が出ないが、この『踏査記』のような手軽なものに、彼の全仕事がまとめられているのは、大変有難かった。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ことに、自由奔放にペンを走らしたと思える「レ・ミゼラブル」のような浩瀚こうかんなものについては、種々の困難が伴なうものである。だが私としては相当の努力はしたつもりである。
波瀾重畳はらんちょうじょうの御生涯と承わって居りますから、余程浩瀚こうかんなものになりましょうな?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
碧巌録の浩瀚こうかんな講義を著はしたりしながら、その奇癖のため宗門の一部から毛嫌ひされてゐる洪天和尚は、もともと同県の古馴染であるが、やはりその頃から、美貌の若い奥さんを伴つて
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
中央に集められていた全国の地名調数千冊は、非常に貴重なまた浩瀚こうかんなものであったが、これは何人もまだ精読してみないうちに、惜しむべし大正十二年の震災で丸焼けになってしまった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
十八世紀日本美術の研究に関するゴンクウルの計画はすこぶる浩瀚こうかんなるものなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼女はそのために浩瀚こうかんな備忘録を書いている。
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浩瀚こうかんの秋まで続く曝書ばくしょかな
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
鑑定書はいずれも微に入り細を穿ち、頗る浩瀚こうかんなものであるが、こゝには結論を挙げるだけにとゞめて置こう。布地に関する鑑定は次の如くである。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あきらかに頼源のことばである——つまり浩瀚こうかんな書物をつかった暗号書簡だったのだ。そしてこの巧妙な情報手段は、帝にいろいろな耳あたらしい本土情勢をつたえていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これにつて見れば林氏は尋常一様の輸出商人にあらざることを知るべし。千九百二年巴里において林忠正はそが所蔵の浮世絵並に古美術品を競売に附するに際し浩瀚こうかんなる写真版目録を出版せり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)