そそ)” の例文
松の朽葉くちばは掃かれ、柳の根がたには、水がそそいであった。これを見るも、彼が途上の楽しみの一つらしかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝夕あさゆうほうきったり、あらそそぎをしたりして、下女だか仲働だか分らない地位に甘んじた十年のあと、別に不平な顔もせず佐野といっしょに雨の汽車で東京を離れてしまった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また俗間ぞくかんの伝説では、昔一女子があって人をおもうてその人至らず涕涙ているい下って地にそそぎ、ついにこの花を生じた。それゆえ、この花は色があでやかで女のごとく、よって断腸花だんちょうかと名づけたとある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
陽は温暖に降りそそぎ、風は花々ゆすつてゐた。
蕭々せうせうと降りそそ
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)