江戸子えどっこ)” の例文
しかし朝風呂の熱いのに飛込んで、ゆで蛸のようになって喜ぶような江戸子えどっこ風の潔癖は、時勢と共にお客の方にもうなくなっている。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
子持縞こもちじま布子ぬのこを着て、無地小倉の帯を締め、千住の河原の煙草入を提げ、不粋ぶすい打扮こしらえのようだが、もと江戸子えどっこだから何処どっか気が利いて居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
湯帰りに師匠のところへ行って、一番うなろうという若いしゅも、今では五十銭均一か何かで新宿へ繰込む。かくの如くにして、江戸子えどっこは次第に亡びてゆく。浪花節なにわぶしの寄席が繁昌する。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
博士はそろそろ巻舌まきじたになって来た。博士は純粋の江戸子えどっこで、何か話をして興に乗じて来ると、巻舌になって来る。これが平生寡言沈黙の人たる博士が、天賦の雄弁を発揮する時である。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「旅馴れないのは、かえって江戸子えどっこの名誉なんですわ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江戸子えどっこは無遠慮に出しゃばってけんつくをくいます。
俳句上の京と江戸 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
うち彼様あんな塩梅に成って此方こちらよりほかに居る処がえから、い事にして、新吉が寝泊りをして居るというのだが、わっちも新吉もお賤さんもお互に江戸子えどっこで、妙なもので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
新「おっかさん、なんですか、お前さんは何処どこの出のお方でございます、多分江戸子えどっこでしょう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
中には江戸子えどっこで土地を食詰くいつめまして、旅稼ぎに出て来たというような職人なども居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前もちいさい時から田舎者に成ったけれども、江戸生れだそうだが、斯うやって江戸子えどっこ同志で寄集よりあつまるとは誠に頼もしいものだ、毎度種々いろ/\馳走になって済まない、決して構ってくれるなよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
是から行ったって泊めるとこもねえ小村こむらだから、水街道へ行かなけりゃア泊る旅籠屋はたごやはねえ、まアいやナ、江戸子えどっこなれば懐かしいや、己も本郷菊坂生れで、無懶やくざでぐずッかして居るが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)