汚辱おじょく)” の例文
横の両眼は悪心降伏あくしんごうぶくの害毒削除の威力を示すが、竪の淫眼のみは、いつでも貪著と、染悪せんおと、醜劣と、汚辱おじょくとを覗いてやまぬものだ
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悲壮の美あり、崇高すうこうの観念あり。汚辱おじょくも淫慾も皆これ人類活力の一現象ならずして何ぞ。彼の尊ぶ所は深甚なる意気の旺盛のみ。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あまりの恐ろしさに、もう気力も尽きたかと感じたが、しかし、こんな野獣の餌食えじきになるのは、考えただけでも耐えがたい汚辱おじょくであった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは平松屋源左衛門の弟で、自堕落じだらくと、不道徳と、汚辱おじょくの中に育った美少年であることは八五郎も知っておりました。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
神聖なるものが汚辱おじょくに返ると、俗界以上にけがらわしくなる。まさにそれが富士教団へやって来ようとしているのであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もし助命するとすれば、人の心、何うしてあの四十六士の心が、老い死ぬ迄、今のようにいさぎよくあろうぞ。一名の汚辱おじょくを出せば、一党の汚辱となろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
精神的には導かれ守られる代りに、世俗的な煩労はんろう汚辱おじょくを一切おのが身に引受けること。僭越せんえつながらこれが自分のつとめだと思う。学も才も自分は後学の諸才人におとるかも知れぬ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
お冬は泣いてくやんだ。彼女は自分の父が殺人の大きい罪を犯したのを悲しむと同時に、磯貝にしいたげられた自分のぬぐうべからざる汚辱おじょくを狭い町じゅうにさらすのを恐れた。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そんなに可愛いがった妹が、すくみちのない汚辱おじょくに泣き暮しているのを見ると、その次兄は
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
悲壮の美あり、崇高の観念あり。汚辱おじょくも淫慾も皆これ人類活力の一現象ならずして何ぞ。彼の尊ぶ所は深甚しんじんなる意気の旺盛おうせいのみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かかる汚辱おじょくをそのままお見逃しにはならなかった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
君家へも汚辱おじょくのうわぬり……。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)