水脚みずあし)” の例文
御本陣から吹きならす貝の音に応じて、各所の貝の音が答えつつ、全軍三万の兵は、堤をった水脚みずあしのように、きびすかえして動き始めたのであった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かの隅田川に、ただ一羽なる都鳥があつて、雪なす翼は、朱鷺色ときいろの影を水脚みずあしに引いて、すら/\と大島守の輝いて立つそでの影にるばかり、水岸みずぎしへ寄つて来た。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
水脚みずあしを入れた艀舟は、入れかわり立ちかわり、大川へ指し下り、天神の築地つきじかかっている親船へ胴のをよせてゆく。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ざんぶと浪に黒く飛んで、螺線らせんを描く白い水脚みずあし、泳ぎ出したのはその洋犬かめで。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その水脚みずあしはやいか、一鞭いちべん東へさす彼が迅いか。石井山はあとになった。全軍また奔河ほんがのごとく急ぎに急いでいる。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま、船は加賀かがの北浦に沿って、紅帆こうはん黒風こくふうのはためき高く、いよいよ水脚みずあしをはやめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
退汐時しおどき水脚みずあしはやいこと、満々たる大河へのぞんで、舟は見る間に流し——。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)