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水汲
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みづく
薪とる
里人の話によれば、庵の中には玉を
轉ばす如き
柔しき聲して、
讀經の
響絶ゆる時なく、
折々閼伽の
水汲みに、谷川に下りし姿見たる人は
勘次の
冴えた
目が
隙間から
射す
白い
雪の
光に
欺かれておつぎを
水汲みに
出した。さうして
卯平は
救はれたのである。
奇麗に
浚つてしまつて、井筒にもたれ、
井底深く二つ三つの涌き口から
潺々と清水の湧く音を聴いた時、
最早水汲みの難行苦行も
後になつたことを、嬉しくもまた
残惜しくも思つた。
あゝ横笛、吾れ人共に誠の道に入りし上は、影よりも
淡き昔の事は問ひもせじ語りもせじ、
閼伽の
水汲み絶えて流れに宿す影留らず、觀經の音
已みて梢にとまる響なし。