水差みずさし)” の例文
しかし伊賀の名を負うもので最も有名なのは「伊賀焼いがやき」であります。茶の湯では、そこで出来た昔の種壺たねつぼ水差みずさしなどに用いて珍重しました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それそれその戸袋にった朱泥しゅでい水差みずさし、それにんだは井戸の水じゃが、久しい埋井うもれいじゃに因って、水の色が真蒼まっさおじゃ、まるで透通る草の汁よ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此のたまの虫干しの日に、遂に私は粗相をしました。うっかり何かにぶつけて、父の大切にしている赤い絵模様の水差みずさし握手にぎりてを折って了ったのでした。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
殿下御秘蔵の水差みずさしふたを取りまして急ぎ聚楽じゅらくまかり上り、関白殿の御覧に供えましたところ、その水差と申しますのは、もとはさかい数寄者すきものの物でござりましたが
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
珠緒さんが殺された枕元のコップと水差みずさしにモルヒネが投入されていたというが、モルヒネは海老塚医院も秘密に所蔵している由であるし、実は多門老人がモヒ中毒で
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ふと、枕元の水差みずさしへ手をのばしかけると、盆の端に、この置手紙があったのである。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
片手の水差みずさしに汲んで、桔梗にそそいで、胸はだかりにげたところは、腹まで毛だらけだったが、とこへ据えて、円い手で、枝ぶりをちょっとめた形は、悠揚ゆうようとして、そして軽い手際てぎわで、きちんときまった。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)