気負きお)” の例文
旧字:氣負
と、おのおの出撃すべしと気負きおい立って、令を求めたが、家康はいっこうよろこぶ気色もなく、また、追い撃ちも、断じてゆるさなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、若殿様の方は、気負きおつて駆けてお出でになつた所でございますから、むづかしい御顔をなすつて、二三度御み足を御踏鳴おふみならしになりながら
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが千恵にはもちろん満足でもあり、と同時にHさんの人の好い気負きおつた様子が、なんだか少し滑稽こっけいでもありました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
どうなるものですか、やくざ男にだまされるのは山の娘の名折れだけれど、世間にはばかる人を助けるのは山の娘の気負きおいだとさ。なんにしてもお徳さんの心の中を
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
校庭に出ると、今日はじめて親の手をはなれ、ひとりで学校へきた気負きおいと一種の不安をみせて、一年生のかたまりだけは、独特どくとくな、無言のざわめきをみせている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ひとりで気負きおって、愛一郎という青年を庇いだてするような真似をしたが、現実は、サト子が考えているような、甘いだけのものでなかったことを知って、目がさめたようになった。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
踏みこまねば際限きりがない! と気負きおいたった栄三郎が、泰軒にあとを頼んで戸のあいだに身を入れたかんぱつ! 内側に待っていた氷剣、宙を切って栄三郎の肩口へ! と見えた瞬間しゅんかん
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一天いつてんすみすり流し満山まんざんの桜のいろは気負きおひたちたり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「戦争だ。戦争だ。」——彼女はそう思いながら、一生懸命に走ろうとした。が、いくら気負きおって見ても、何故なぜか一向走れなかった。…………
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、義元以下、そこの将領たちは、なお哄笑雑談、明夜の清洲城一番乗りを、ことばの上で気負きおい合ったり、信長何者ぞと、誇ったりしていたのである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時、小野川はもういい年であったが、気負きおいの面白い男でよく飲む。
おくのまわりは、降るような物音だ。郎党たちが、うまやから馬をひき出し、土倉から武器、松明たいまつなど取り出して、しかりあい、わめきあいしながら、気負きおいをしているらしい。
周馬の気負きおったうしろ姿を見ると、天堂はニッと笑った。決して、悪い意味ではなかった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
織田信長も、大勝の気負きおいにまかせて、三河と今戦うことの愚をよく知っている。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、どうじあって、知らず知らず、気負きおい立った一決を見たにちがいない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、わざと彼を気負きおわせて、一気に馬を早め去った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたらよ、気負きおい者。その愚や、言語道断ごんごどうだん
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)