欣喜きんき)” の例文
彼は自分の力に欣喜きんきしながらパリーの中を濶歩かっぽした。理解されなくとも結構だ。その方がかえって自由だろう。
これを総括して改めて世にのこすことを慫慂しょうようせられ、さらにその整理校訂の労までを引き受けてくれられたことは、自分としては抑制しあたわざる欣喜きんきである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
手紙の文中に「恐縮の至り」「欣喜きんきの至り」などあり、西洋でも書簡文しょかんぶんには、その終りに Your obedient servant と記する礼法があるが、これを
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
前の年には妻を迎えこの年には新に家を築造したのみならず、枕山はそのころに至って自らその詩風の旧調を脱して新生面を開き来ったことを知り欣喜きんき措くべからざるものがあった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は自己の所有から与え得る限りを与えんとする。彼からは今まであったものが失われて、見たところ貧しくはなるけれども、その為めには彼は憂えないのみか、却って欣喜きんき雀躍じゃくやくする。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
沃土よくど」の和田伝、島木健作その他何人かで、有馬農相のお見出しで、農村文化の立役者となり、作品が帝国農会の席上引用され、和田氏は日本の政治の明朗化の実証と欣喜きんきして居ります。
まち人々ひと/″\ことかれいつ輕蔑けいべつして、無教育むけういく禽獸的生活きんじうてきせいくわつのゝしつて、テノルの高聲たかごゑ燥立いらだつてゐる。かれものふのは憤懣ふんまんいろもつてせざれば、欣喜きんきいろもつて、何事なにごと熱心ねつしんふのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
まち人々ひとびとのことはかれはいつも軽蔑けいべつして、無教育むきょういく禽獣的生活きんじゅうてきせいかつののしって、テノルの高声たかごえ燥立いらだっている。かれものうのは憤懣ふんまんいろもってせざれば、欣喜きんきいろもって、何事なにごと熱心ねっしんうのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)