機宜きぎ)” の例文
平次のやり方は機宜きぎを掴みました。もう半刻放つて置いたら、親切ごかしの彌次馬に荒されて、何が何だかわからなくなつて了つたでせう。
こういうことについては、なにもかも一応知って苦労をしておき、そして、機宜きぎの処置がとれなくてはいけません。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
今起った一揆いっきは少しでも早く対治してしまって其の根を張り枝を茂らせぬ間に芟除かりのぞき抜棄てるのを機宜きぎの処置とする。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それでも一度だけ彼は険しい顔をして、自分と相向あいむかいに坐っている子供たちをっと睨みながら食卓を厳しく叩いた。それはまったく機宜きぎに適した処置であった。
依頼人がロス氏というビジネス界と市政の大立物おおだてものなので、とくに大事をとったにすぎなかったのかもしれないが、この署長の措置そちは、おおいに機宜きぎを得たものとして
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ウルリーケはこまごま当時の情況を述べたが、それはすこぶる機宜きぎを得た処置だった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
露国のけい急なると共に、他方においては英船文化五年(千八百〇八年)長崎に入り、港内を剽掠ひょうりゃくし、ために長崎奉行松平康英をして、自殺してその機宜きぎを失するのせめを幕府に謝せしめたりき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
総監は流石に機宜きぎの処置を誤らなかった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平次のやり方は機宜きぎつかみました。もう半刻はんとき(一時間)放っておいたら、親切ごかしの野次馬に荒されて、何が何だかわからなくなってしまったでしょう。
刹那せつな彼の神経を萎縮いしゅくさせて、とっさの判断、敏速機宜きぎの行動等をいっさい剥奪はくだつし、呆然として彼をいわゆる不動金縛かなしばりの状態に、一時佇立ちょうりつせしめたのだと省察することができる。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)