こしかけ)” の例文
倒るゝ如くに路の邊のこしかけに倚りて、灼くが如く熱し、つちにて打たるゝ如く響く頭を榻背たふはいに持たせ、死したる如きさまにて幾時をか過しけん。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
許多あまた石碣せきけつ並び立てり。二碑の前に彫鏤てうるしたるこしかけあり。是れポムペイの士女の郊外に往反ゆきかへりするときしばらく憩ひし處なるべし。
空も、山も、湖水も、すべて暗い、不確な灰色の中に漂っている。その輪廓りんかくをはっきり見ようと、目に力を入れるのが、愉快である。女はこしかけに腰を掛けて薄明りの中を見詰めている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
こしかけに坐ったまま板縁の地図へずっと手をさしのばして、そのこまかく図してあるところより蜘蛛くものように画かれた線路をたずねながら、かなたこなたへコンパスを歩かせているうちに
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
倒るゝ如くに路のこしかけに倚りて、灼くが如く熱し、つちにて打たるゝ如く響くかしら榻背たふはいに持たせ、死したる如きさまにて幾時をか過しけん。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
人々は生面の客あるを見ても、絶て怪みいぶかることなく、我にこしかけを與へて坐せしめ、我にさかづきを與へて飮ましめ、さかなせんとて鹽肉團サラメをさへりてくれたり。
大通事は板縁の上、西にひざまずき、稽古通事ふたりは板縁の上、東に跪いた。縁から三尺ばかり離れた土間にこしかけを置いてシロオテの席となした。やがて、シロオテは獄中から輿こしではこばれて来た。
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
倒るるごとくにみちこしかけりて、くがごとく熱し、つちにて打たるるごとく響くかしら榻背とうはいに持たせ、死したるごときさまにて幾時いくときをか過しけん。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
想ふに當時このこしかけに坐するものは、碑碣のあなたなる林木郊野を見、往來織るが如き街道を見、又波靜なる入江を見つるならん、今は唯だ窓牖さういうある石屋せきおくの處々に立てるを望むのみ。