桜貝さくらがい)” の例文
旧字:櫻貝
と、五百之進も、顔を寄せて行ったが、花世は、桜貝さくらがいのように耳をあかくして、父と老人が、低声こごえで読む手紙の内容を、うっとりと、鼓動こどうの胸へうけ容れていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たらいの中には桜貝さくらがいくしこうがいが浮んでいるだけであった。雪女、お湯に溶けてしまった、という物語。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
渋茶しぶちゃあじはどうであろうと、おせんが愛想あいそうえくぼおがんで、桜貝さくらがいをちりばめたような白魚しらうおから、おちゃぷくされれば、ぞっと色気いろけにしみて、かえりの茶代ちゃだいばいになろうという。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)