柔順すなほ)” の例文
姿すがたをつきました。あゝ、うつくしいしろゆび結立ゆひたてのひんのいゝ圓髷まるまげの、なさけらしい柔順すなほたぼ耳朶みゝたぶかけて、ゆきなすうなじやさしくきよらかに俯向うつむいたのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と彼女は傍若無人と云つてもよいやうに、一番縁側の近くに坐つてゐる、若いモーニングを着た紳士をゆびさした。紳士は、柔順すなほにモヂ/\しながら立ち上つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
慾をかわくな齷齪するなと常〻妾に諭された自分の言葉に対しても恥かしうはおもはれぬか、何卒柔順すなほに親方様の御異見について下さりませ、天に聳ゆる生雲塔は誰〻二人で作つたと
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それ、徒労力むだぼねことよ! えうもない仕事三昧しごとざんまい打棄うつちやつて、わかひとつま思切おもひきつて立帰たちかへれえ。老爺おやぢらぬ尻押しりおしせず、柔順すなほつまさゝげるやうに、わかいものを説得せつとくせい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)