くるる)” の例文
旧字:
と言って米友は立ち上って、土間へ下り、関守氏が入って来たところの出入口をぴったりと締めきって、くるるをカタリとおろしてしまい
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
調べて見ると、両側の窓の雨戸は閉まったまま、中からちゃんとくるるがかかっている。二つの押入れも開いて見たが、中は何もないがらんどうだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
壁には、やにっぽい魚油が灯されていて、その光が、くるるの上の艇長の写真に届いているのだが、その下で、ウルリーケがぼんやりと海を眺めている。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
小親わがかたに歩み寄りしが、また戻りぬ。内よりくるる外す音して、かどの戸のいたるは、跫音あしおともせざりしが、姉上の早や二階を下りて来たまいたるなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾度いくたびも廊下の角を曲がつた末に、主人と己とは一つの扉の前に立ち留まつた。鍵のから/\鳴るのが聞えた。続いて鍵で錠を開けた。油の引いてあるくるるが滑かに廻つて、扉がしづかに開いた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
戸のくるるが震えて、錠前がきました。そうでないと
くるるなりきしみ
測量船拾遺 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
くるるをかたかた、ぐっと、さるを上げて、ずずん、かたりと開ける、袖を絞っておおい果さず、あかりさっと夜風に消えた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまり、この女の子は、咄嗟とっさの間にはここのくるるのかげんも知らないものだから、必死にここを抑え、この垣一重の内へは敵を入れまいと努力していることは明らかです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かねて心に定めて置いた通り、川手氏は急いでそこを出ると、音のせぬように、廊下の端の雨戸のくるるをはずし、ソッと引き開けて、真暗な庭の声のしたと思われる箇所へ手燭をさしつけた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私はまた、曲り角で、きっと、そっ立停たちどまって、しばらくって、カタリとくるるのおりるのを聞いたんです。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この家の主人あるじが先立ちで、駕籠屋、馬方など避難の連中が、ビシビシと戸を締めきり、内からくるるを卸した上に、心張しんばりをかい、なお、万一の時の用意に、慶長年代の火縄の鉄砲を主は持ち出し
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雨戸のくるるを外すのも、やはり女の声でありました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)