板間いたのま)” の例文
脱衣場に入ると、私達はあとのドアをしめ切って、旅館の浴場にしては贅沢ぜいたくなほど広い、そこの板間いたのまを見廻しました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
広い板間いたのま、立て働くように出来た流許ながしもと、それからいかにも新世帯らしい粗末な道具しかお雪の目に入らなかった。台所の横手には煤けた戸があった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この道場というは四けんと五間の板間いたのまで、その以前豊吉も小学校から帰り路、この家の少年こどもを餓鬼大将としてあばれ回ったところである。さらに維新前はおめん籠手こてまことの道場であった。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
玄関の板間いたのまに晨は伏目ふしめに首を振りながら微笑ほゝゑんで立つて居た。榮子は青味の多い白眼がちの眼で母をじろと見て、口をゆがめた儘障子に身を隠した。格別大きくなつて居るやうではなかつた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その横が生垣いけがきに成って居りますから、およそ七八軒奥のほうに家が建って居まして、表のかたは小さい玄関ようで、踏込ふみこみが一間ばかり土間に成って居ります、又式台という程では有りませんがあがり口は板間いたのま
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、この時、梯子段下の板間いたのまで一時に起る物音、人声。