あたたま)” の例文
多分おおかた小鼻怒らし大胡坐おおあぐらかきて炉のはたに、アヽ、憎さげの顔見ゆる様な、藍格子あいごうしの大どてら着て、充分酒にもあたたまりながらぶんを知らねばまだ足らず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
部屋の中でストーブにあたたまって話しているうちに、ふと立って廊下に出て見ると、何処から吹き込んだかわからぬように一面に真白に、水晶の粉のような雪がまかれる。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
出来る事なら男を呼びさましてぴったり寄り添って男の体のあたたまりを、男の生活を直接に身に感じて見たい。それから、なんだか不思議に自分が罪を犯しているような気がして来た。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「蕎麦かきはあたたまると申します。差上げたらば、と母と二人でそう申しましてね、あの、ここへ持って参りました。おかわりを添えてございますわ。お可厭いやでなくば召上って下さいましな。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火のおきを貰っていつものようにあたたまろうとしました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
膝掛ひざかけ引抱ひんだいて、せめてそれにでもあたたまりたそうな車夫は、値がきまってこれから乗ろうとする酔客よっぱらいが、ちょっと一服で、提灯ちょうちんの灯で吸うのを待つ、氷のごとく堅くなって、催促がましく脚と脚を
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)