旋回せんかい)” の例文
かれは矢声やごえをはなって輪を投げた、輪はくるくると旋回せんかいして棒の頭にはまらんとしてかすかにさすったまま地上に落ちた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それと同時に、好奇と驚異、清寧と冷徹——詩の両極をなす思想が、かれを中軸として旋回せんかいしはじめるのを覚える。
空のあいが濃く暗くよいを作ってきても、まだ、未練そうに、旋回せんかいしていた。——美味うまそうな血しおの上を。
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
得意げにその兵士の舟の上を旋回せんかいしていたら、ひとりのいたずらっの兵士が、ひょうと矢を射てあやまたず魚容の胸をつらぬき、石のように落下する間一髪、竹青
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
二三度旋回せんかいした宇宙航空船は、ふたたび機首をめぐらして、日本の国、三角岳さんかくだけへ向かったのだった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一ひねり五へん六ぺん旋回せんかいする。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かれは棒と自分の距離きょりをはかり、それから手に持った輪の重さと旋回せんかいの力を考え、つぎに自分のからだの位置とコントロールを考えてるうちに
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
さわぎを耳にして、船部屋ふなべやからあらわれた龍巻九郎右衛門たつまきくろうえもんは、ギラギラかえす朝陽あさひに小手をかざして、しばらく虚空こくう旋回せんかいしている大鷲の影をみつめていたが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途端とたんに、彼の乗っている司令機は、かじをとって、静かに機首を左へ廻したのだった。あとにしたがう二機も、グッと旋回せんかいを始めたらしく、プロペラが重苦しいうなり声をあげているのが、聞えた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆうゆうと茶褐色ちゃかっしょく腹毛はらげを見せて、そこをらんともせず、高くも舞わず、御岳みたけの空を旋回せんかいしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小さくきざんでくるもの、球の回転なしにまっすぐにすうと地をすってくるもの、左に旋回せんかいするもの、右に旋回するもの、約十種ばかりの性質によってにぎり方をかえなければならぬ。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
羽柴軍二万のうち、五千は後に留められ、一万五千が、旋回せんかい一路、秀吉に続いたのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして咲耶子が、われとわが吹く音色ねいろにじぶんをすら忘れかけたころ、さらにすさまじい一じん疾風しっぷうが、月のふところをでて、小太郎山こたろうざん真上まうえをびゅうッ——と旋回せんかいしはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶え間なく兵を歩ませつつ実は巨大な輪形陣を旋回せんかいしながら、あたかも颱風たいふうが緯度を移ってゆくよう、信玄の陣前じんまえへ迫って行ったということは、彼の決意から見ても、戦略からいっても
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
棒はぶんぶん鳴って、彼自体の前後を、まるで車のように旋回せんかいして舞う。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉はみずから這い出したものでなく、一世をけ去った信長のあとに、前から在るままに在った者である。太陽はのっと昇るように見えるが、実は地表のはや旋回せんかいによってそう見えるようにである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)