ひけ)” の例文
最初飼った「しろ」は弱虫だったので、交尾期には他の強い犬に噛まれて、つねに血だらけになった。デカは強いので、滅多にひけは取らぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
怠惰にかけては、誰にもひけはとらなかつた、が自分は怠惰以外の、彼等の徳とする凡ての心を持ち合さなかつた。
明るく・暗く (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
舞台へ出るけいこ最中の若者らは他村にひけを取るまいとして、振付ふりつけは飯田の梅蔵に、うたは名古屋の治兵衛じへえに、三味線しゃみせんは中村屋鍵蔵かぎぞうに、それぞれ依頼する手はずをさだめた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さてそれからどんなことがあったか、暫くして、賊の本船に文代と三次とが帰りついたところを見ると、我が明智小五郎は、残念ながら三次の為にひけを取ったものと見える。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
踏んで、今じゃあ、玄蕃や小六などに滅多なひけは取らぬ心算つもりだ。決して心配してくれぬがいい
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主筆は、體格の立派な、口髭のいかめしい、何處へ出してもひけをとらぬ風采の、四十年輩の男で、年より早く前頭の見事に禿げ上つてるのは、女の話にかけると甘くなるたちな事を語つて居た。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ははッ、さまでにお心をわずらわせまするは玄蕃の不徳、しかし馬術と事違って剣法では、不肖といえども指南番の名を汚す玄蕃めが、身命を賭してもひけはとらぬ所存でござりまする」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人種と人種の競争——それにひけを取るまいといふ丑松の意気が、何となく斯様こんな遊戯の中にもあらはれるやうで、『まけるな、敗けるな』と弱い仙太を激厲はげますのであつた。丑松は撃手サアブ
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
主筆は、体格の立派な、口髯のいかめしい、何処へ出してもひけをとらぬ風采の、四十年輩の男で、年より早く前頭の見事に禿げ上つてるのは、女の話にかけると甘くなるたちな事を語つて居た。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)