ゆれ)” の例文
旧字:
段をのぼると、階子はしごゆれはしまいかとあやぶむばかり、かどが欠け、石が抜け、土が崩れ、足許も定まらず、よろけながらのぼった。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曈々とうとうたる日輪はたるんでいる大空をゆれつつ動いた。長い真昼の間、花の咲いている家は戸が閉っていた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
蛛網はゆれます。蜘蛛は蜂を残しておいて、自分の餌がまた、そんなにも早くかゝつたその仕合せな機会をよろこんで走つて来ました。そして同じ手段がまた繰り返されました。
こもの下から犬の尻尾とか足とかが見えていたというけれど、私が其時きっと目を据えて視たのでは、唯車が躍ってこもが魂の有るようにゆさゆさとゆれるのが見えたばかりで、ほかには何も見えなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
白髪天頭しらがあたまを左右に振ったが、突然いきなり水中へ手を入れると、朦朧もうろうとして白く、人の寝姿に水のかかったのが、一ゆれしずかに揺れて、落着いて二三尺離れて流れる
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)