かえ)” の例文
何かの見違いではないかと、暫く拭く手を休めて、じっと見ている内に、今度は少し位置をかえて、又チラチラと光るのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
孤堂先生は右の手に若干そこばくの銀貨を握って、へぎおりを取る左とかえに出す。御茶は部屋のなかで娘がいでいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
抑も人の喜怒哀楽直に発してことばと成り再び伝って文とる、ことかえて之を言えば、ことばは意を写し文はことばを写せるものなり、直写と復写と其の精神を露わすに厚薄あり
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
言いかえれば低級でかつ無意味な飲食の交際や、活溌な、言い換れば青年的勇気の漏洩ろうえいに過ぎぬ運動遊戯の交際に外れることを除けば、何人なんぴとにも非難さるべきところのない立派なものであった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(微笑む。)なぜわたくしがオペラと申しましたのを、わざわざアクションという詞におかえあそばしたの。もしこの跡を続けましたら、それこそオペラでございますわ。本当のお芝居でございますわ。
そこへ抱主かかえぬし因業いんごうで、最近持上った例の松村という物持の身受話が段々うるさくなり、うんというか、借金を倍にしてほかへ住みかえでもするか
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分だって読んだ事もないのに鉄道馬車の中なんかでよせば善いと思ったが、仕方がないからウンウンと生返事をしていた。やがてケニングトンについた。ここで馬車を乗りかえる。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
焦点は太陽の移動と共にジリジリ位置をかえて、今や点火こうの真上にその白熱の光りを投げた。と、同時に、鋭い銃声が部屋一杯に響きわたり、銃口からは白い煙がモクモクとゆらめいた。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
云ひかえれば客観の世界が主観の世界と一致をかくが為である。現実がわれに伴はざるの恨みである。又云ひ換ればわが理想がわが頭の中に孤立して、世態とあまりに没交渉なるがためである。
文芸とヒロイツク (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
警部はなかば向きをかえて、寝台の上を指さした。そこには、最新式の連発銃が、やっと手の届く程の高さの所にかかっていた。迂濶うかつな話だが、私はそれまでちっともそれに気がつかなかった。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
言いかえれば酒の資格を鑑別するためであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)